これまで多くの医学科志望者を見てきました。
その数を数えようと思ってみたのですが、100を超えたところで数えるのをやめました。
その中で現役で合格した子は15%くらい。
浪人した末に合格した子が20%くらいだったでしょうか。
残りの65%は最終的に医学科に合格することはありませんでした。
医学科志望者の半数はそもそも現役時に医学科を受験せず、他学部を受験します。
他にやりたいことができて志望を変更する子もいますが、ほとんどの子は学力的に難しいと判断して医学科受験を避けます。
また、現役時代、浪人時代共に医学科に挑戦をし続け、最終的に諦める子もいます。
他学部に進学したり、就職したりと、それぞれがそれぞれの道を歩んでいきます。
医学科受験というのは恐ろしく険しい道のりです。
共通テストで900点中800点という高得点が必要とされ、二次試験でも並み居るライバルたちに差をつけなくてはなりません。
800点という数字は「800点を取る」というよりは「100点しか落とせない」と考えた方がしっくりきます。
医学科受験はミスが許されない戦いと言えるのです。
その試験の性質上、学力があっても合格できない子も出てきます。
本番に弱いというのか、緊張しやすいというのか、力はあるのにミスを連発してしまい、なかなか合格できないのです。
その結果、「こんなにミスをする人間が医者になるべきではない」と言って数年浪人した末に諦める子もいました。
その生徒が本心でそう思っていたのか、自分自身を納得させるための方便だったのか、今となってはわかりませんが、最近になって大学で楽しく勉強しているという連絡があり、とても安心しました。
また、浪人してから医学部を諦めるのは、何も生徒本人の判断だけではなく、保護者様の判断も関係してきます。
当然ながら浪人するのにもお金がかかります。
仮に3年浪人すれば100%合格できるのなら多くの人が浪人費用を払ってもいいと考えるでしょうが、そんな保証はどこにもありません。
3年たった後、合格できなかった時のリスクを考えると保護者様の不安も十分すぎるくらいに理解ができます。
加えて、今は男女平等の時代ではありますが、女の子の場合はその心配は余計に大きくなるでしょう。
21で医学部に合格しても、そのあと6年間大学に通い、卒業するころには27歳。
それから研修医として忙しい毎日を送ることを考えると、多くの保護者様が二の足を踏むのも当然なのかもしれません。
ただ、諦めないで勉強を続け、何年もかけて悲願を達成した生徒たちも多くいました。
ある女の子は4浪で医学科に合格し、医学生として人生を謳歌しています。
ある男の子は3浪した後、一度は医学部受験から離れ、そして再挑戦をして高校卒業6年目にしてついに医学科合格を勝ち取りました。
3浪で合格した子も沢山いますし、社会人になってからの再受験で医学科に進学した方もいらっしゃいました。
彼らを見てきて感じるのは、諦めなければ負けではないという事です。
長年の雌伏の時を過ごし、ついに人生の大勝負をやり遂げた彼らは、誰一人として後悔している様子などありませんでした。
受験は結果論だと言われることがあります。その例にもれず、彼らも結果が出たから後悔せずに済んでいるだけでしょうか。
何年も浪人をした後、結果に恵まれなかった子たちは皆後悔をしつづけるのでしょうか。
私はそうは思いません。
勝つか負けるか分からない、そんな厳しい関門に果敢に立ち向かい続け、わずかでも可能性があればそこに持ちうるすべてを投入する。
そんな大勝負をやってのけた子たちは勝敗に関わらず、皆納得して次のステージに進んでいきます。
後悔するかどうかは結果ではなく、その過程にあるのだと私は思います。
中途半端に投資をして、中途半端に投げ出して、中途半端に諦める子が一番後悔するように感じます。
我々は高校生の彼らが、将来後悔をしなくて済むように、途中で投げ出すことなく、最後まで戦い抜けるようにサポートしなければならないと再確認した、そんなお昼でございました。